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「負動産時代」が不動産業に与える影響

最近、メディアの特集等で、「負動産」という言葉をよく目にするようになりました。
所有者にとって、売るに売れない、捨てるに捨てられない状態まで資産価値が低下し、負債となっている不動産を「負動産」と定義しているようで、実際に、所有者の中には、お金を払ってでも処分したい、自治体等に寄付したい、土地を放棄したいという動きが増えているのが現実です。かつては、土地は持っているだけで値上がりする大切な「資産」でしたが、今や持っているだけで税金や管理費がのしかかる「お荷物」だと感じる人が増えています。今回は、このような「負動産」が増加する背景と政府部内の対応の動きについてお伝えします。

 

現在、五輪を控えた東京の都心部など一部では不動産市場は活況ですが、国土交通省の資料によると、地価指数は2011年を100とした場合、2016年は93.4に低下し、また、同省の土地問題に関する意識調査では、「土地は預貯金や株式に比べて有利な資産だと思う」という人は30.1%となっており、20年前から半減しています。

 

また、国立社会保障・人口問題研究所が公表したデータ(2018年3月30日)によりますと、2030年には日本の全都道府県で人口が減少し、2045年までに総人口は1億0642万人になると予想し、今後30年で2000万人以上減少するとしています。特に、都市部より地方で3割減が当たり前と見込まれています。同時に、高齢化も確実に進み、65歳以上の人口比率は首都圏でも、現在の1.3倍に増加し、2065年には65歳以上の老年人口比率はほぼ4割となることが見込まれます。こうした人口減少・超高齢化社会は、不動産市場にも影響を及ぼしており、地方部を中心に、空き家問題、資産価値の減少問題、所有者不明土地問題が深刻化することにつながっていると言えます。

 

実際に、都心の一部を除いて住宅やアパート、オフィスが余っている状態は明らかです。都心の一等地では、オフィス空室率が2%といった報道がされているものの、全国的に見れば7軒に1軒が空き家状態で、全国の空き家率は13.5%(2013年現在)に達しており、空き家やアパートなどの空室が増えている原因は、言うまでもなく地方部の過疎化であり、人口減少社会が起因しています。こうしたことを背景に、日本の住宅価格は、2010年に比べて2040年には平均で46%下落するというシミュレーションもあります。
また、少子高齢化が進む今後は、都市部でも、共同住宅の修繕積立金が不足し、建て替えもできない物件が各地で増えていくことも予想されます。こうした状況が続きますと、今後は、建て替えられない老朽化したマンションに住み続ける高齢者が都市部を中心にあふれかえることになってしまいます。

 

バブル時代やその後に購入したマンションや一戸建ての価格低下の現象が、都心の一部を除いて起こっているとの報道がありますが、資産価値が下がると、お金を払って相続登記する動機がなくなり、放置されやすくなります。放置が何十年も続くと相続人が増え、相続や売却はますます難しくなり、こうした物件の増加は、防災や街づくりに支障を来したり、中山間地で鳥獣被害や森林機能の低下を招いたりします。
また、大量の人が都会に流れ込んだ「団塊の世代」が2025年には全員が75歳以上となり、近い将来に「大相続時代」がやってくることは明白で、これらを背景に、空き家・空き地問題、所有者不明土地問題はさらに深刻化することが予想されます。

 

民間有識者でつくる「所有者不明土地問題研究会」(座長・増田寛也元総務相)の推計では、相続未登記などで所有者が分からなくなっている可能性がある土地の総面積は、九州よりも広い約410万ヘクタールに達すると指摘しています。「負動産」の所有者たちにとっては、固定資産税や登録免許税、維持管理費の負担の重さは深刻で、こうした問題に速やかに対処しなければ、近い将来に不動産取引の停滞につながり、関連事業者のビジネスや市場に深刻な影響が出かねません。
 そこで、政府は、所有者不明の土地を公共利用できる制度の検討を始めましたが、今後は、不動産登記や相続、固定資産税など様々な制度の見直しも迫られそうです。

 

前述のように、日本各地で空き地・空き家問題の深刻化が進んでいる中、政府でも所有者不明土地の増加に伴い、また、公共事業の推進等の様々な場面において円滑な事業実施に支障が生じていることを踏まえ、所有者不明土地の利用の円滑化を図るための「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案」が2018年3月に閣議決定され、報道によりますと、今国会中(2018年6月中)を目途に、成立する見込みとなっています。
これにより、(1)所有者不明土地を円滑に利用する仕組み、具体的には、地域住民等の福祉・利便の増進に資する事業について、都道府県知事が公益性を確認し、一定期間の公告に付した上で、利用権(上限10年間)を設定する制度の創設(所有者が現れ明渡しを求めた場合は、期間終了後に原状回復、異議がない場合は延長可能)、(2)土地の所有者の探索のために必要な公的情報について、行政機関が利用できる制度の創設、(3)所有者不明土地の適切な管理のために特に必要がある場合に、地方公共団体の長等が家庭裁判所に対し財産管理人の選任等を請求可能にする制度の創設等を通じて、各地で所有者不明土地、空き家・空き地問題への対処が進んでいくことが期待されます。

 

 我が国では、既に、空き家対策特別措置法が施行されており、地方自治体に実態調査・情報整備等の努力義務を課していますが、地域住民が望む「負動産」とならない住宅地づくり、不動産の再生の具体化の観点から課題が残されています。
一方で、現行の関連行政法や今般の改正法でも、まちなか・地方都市で買手のつかない空き地・空き家の寄付、 空き家以外の地域で滞留する空き地、所有者不明土地等の不動産の放棄のあり方、汚染懸念の商業施設の強制処分・購入の可否については議論がまだ具体化していません。民法はじめ関連する行政法における解釈・見解、具体的な運用面でも不透明な点があると言えます。また、財源確保、安全な土地(物件)の認証等の新たな民間商品・サービスの普及も併せて、今後の不動産再生政策の課題として具体的な検討が必要になってくるものと考えられます。

 

しかし、今国会で議論が進められている法案の「地域福利増進事業の創設(利用権の設定)」は、放置されている「負動産」になりつつある不動産の有効活用が期待される新たな試みと言えます。地方自治体や不動産関連事業者が一定程度関与した地域コミュニティ組織が、市場で流通しない物件の取得、管理のほか、各コミュニティのニーズに合った高齢者向け・子育て世帯用の住宅や公園、緑地等の整備、地域の福利増進・環境改善を推進することにより、不動産再生が効果的に進んでいくことが期待できるかと思います。

 

 先月、自民党の「所有者不明土地などに関する特命委員会」は、所有者不明土地の活用に向けた提言案をまとめました。所有者に土地の適切な利用や管理の責任を課し、難しい場合は所有権の放棄を認めて団体などが管理を担う仕組みを検討すべきだと明記しています。相続時の登記の義務化などの検討も盛り込まれました。所有者不明土地を公園などの公共目的に使える利用権を設ける特別措置法案の円滑な施行に向けて、ガイドラインの整備や地方公共団体への人的支援なども求めています。

 

 人口が当然のように増え、不動産は価値を持ち続けるという「土地神話」を前提とした日本の土地制度、不動産政策が、今、曲がり角を迎えています。地方部や都市郊外を中心に、資産価値を失って処分に困る「負動産」が広がる中、政府も対策に乗り出しているものの、まだまだ課題は山積みです。「負動産時代」の不動産関連制度をめぐり、今後各種の制度改正が行われる動きが出ていますので、今後も情報提供に努めたいと思います。

 

(参考)「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案」
http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo02_hh_000106.html

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